腎臓の病気について調べる

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3.腎臓がわるくなったときの症状

  • 1.浮腫(むくみ)

浮腫(むくみ)とは、腎臓から水分を十分排泄できなくなり、体内に余分な水分がたまっている状態をさします。腎臓の病気によるむくみは左右対称的であり、むくんでいる部分を指で10秒以上強く押えますと、指の跡がへこんだまま残ります。通常、体重が2~3kg増えますと、重力の関係で、足首のくるぶし付近からむくみ始めます。さらに体重が5kg以上増えますと、むくみは全身にひろがります。肺や心臓に水がたまり、複数の利尿薬でむくみのコントロールができない場合は、透析治療が必要となります。
代表的な腎臓の病気として、たくさんのタンパクが尿に漏れて血液中のアルブミンが低下するネフローゼ症候群や、腎臓の働きが正常の30%未満まで低下した慢性腎不全が挙げられます。
しかし、むくみは腎臓以外の原因、例えば心臓や甲状腺の働きが低下した場合や、足の静脈瘤やリンパの流れが悪い場合などでもみられます。そのため、むくみの原因を解明し、原因に応じて対処することが大切となります。

  • 2.尿量

腎臓は血液中の老廃物をろ過し、尿として体の外に排出する役割を担っています。健常成人の尿量はおおよそ1.0 L~1.5 L/日 です。しかし、何らかの原因で尿量が減少し、1日の尿量が400mL以下になることを乏尿、100mL以下になることを無尿といいます。逆に尿量が増加し、2500mL以上となることを多尿といいます。脱水や心不全により腎血流が低下したり、腫瘍や結石のために尿管や膀胱が閉塞したりすると、尿量は低下します。腎臓の機能が低下すると、尿の濃縮力が低下して多尿となり、夜間頻尿になることが多いですが、さらに腎機能低下が進行すると、尿量が低下します。その他、主な多尿の原因としては、糖尿病、尿崩症、心因性多尿、ミネラルの異常(高カルシウム血症、低カリウム血症)などが挙げられます。尿量の異常が続く場合は、何らかの腎臓の病気が隠れている可能性もありますので、早めにかかりつけ医への受診をお奨めします。

  • 3.夜間尿

夜間に何度もトイレに行く原因としては、膀胱の萎縮や前立腺肥大、膀胱炎などに伴う排尿障害のほか、眠りが浅く日中同様に尿意を感じる睡眠障害を起こしやすいこともあります。夜間睡眠時無呼吸で高血圧をきたした場合や心不全、糖尿病などで夜間尿量が増えることもあります。お薬や寝る前の水分の摂りすぎが原因の場合もあります。また、腎機能が低下した方や高齢の方は、尿の濃縮機能が低下するために夜間多尿となります。また、腎臓の機能が低下すると、摂取したナトリウムを日中に排泄しきれず、夜間に血圧を高くしてナトリウムを排泄しようとすることも夜間多尿の原因となります。

  • 4.頻尿

尿の回数が増えることで、1日8〜10回以上、夜間2回以上トイレに起きる状態をいいます。頻尿には、尿量の増加(1日2L以上)によるもの(多尿)と、尿量が増えずに、回数が増える(狭い意味での頻尿)があります。両者は、1回の排尿の際の尿量で判断ができます。多尿の原因には、糖尿病、尿崩症などがあります。狭い意味での頻尿の原因として、もっとも多いのは、高齢男性に見られる前立腺肥大です。他にも、膀胱炎などによる膀胱粘膜への刺激、過活動膀胱などもあります。治療は、原因となる病気を診断し、その病気の治療をすることになります。

  • 5.だるさ

だるさは末期の腎不全でよく認められる症状の一つです。腎不全により尿毒症物質が蓄積したことにより起こる尿毒症症状の一つとしてだるさが認められることがあります。そのほか、腎不全による貧血が進行したとき、また体液が過剰になったことにより心不全が悪化したとき、電解質異常など、さまざまな要因によりだるさが生じます。腎機能が高度に低下し、だるさが出現する場合には、末期腎不全の症状である場合が多く、透析などの腎代替療法を検討する時期であることが多いです。

  • 6.貧血

腎臓は尿を排泄するだけではなく、ホルモンを分泌する働きもしています。その一つとして、赤血球を作る働きを促進する「エリスロポエチン」というホルモンを分泌しています。腎臓の機能が低下すると腎臓がエリスロポエチンを十分に分泌させることができなくなり、赤血球の産生能力が低下します。このようにしておこる貧血を「腎性貧血」と言います。
腎性貧血になると、一般の貧血と同様に動悸や息切れ、めまいや立ちくらみ、全身倦怠感などの症状が現れますが、貧血は徐々に進行するため、気がつかないこともあります。貧血の有無については、定期検査で行われる血液検査のヘモグロビン濃度で知ることができます。慢性腎臓病で、特にヘモグロビン濃度が11.0 g/dL 未満の方は腎性貧血の可能性がありますので、主治医の指示に従って、適切な治療を受けることが大切です。ヘモグロビン合成ための材料として鉄が必要ですので、鉄欠乏を認める場合には、鉄剤の投与が必要になります。鉄が充足しているにも関わらず貧血を認める場合は、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)やHIF-PH阻害薬による治療が必要となります。治療の目標は、ヘモグロビン濃度11~13g/dLです。

  • 7.かゆみ

あなたがかゆみを感じる時、もし皮膚に発疹があったら皮膚科にかかり、皮膚に発疹がないなら内科に相談してください。皮膚疾患でかゆくなることは多いですが、腎臓や肝臓の病気の時もかゆくなります。
腎臓は体の中や血液の老廃物を尿へ捨てる臓器ですので、腎臓が悪くなると老廃物が血中や皮膚にたまってしまいます。それら老廃物は皮膚の中にあるかゆみ受容体のミュー・ペプチド受容体を刺激し、その電気信号が脳へ伝わってかゆみを感じます。この現象は腎機能が高度の低下した透析患者で多く見られ、半数は強いかゆみを感じます。
腎臓が悪くなると皮膚が乾燥しますが、これもかゆみの原因となります。腎臓の働きが悪くてかゆい方は、まめにお風呂に入ったり、皮膚に湿気を与えるぬり薬を塗ったりすることがかゆみ対策になります。皮膚の防御作用をこわさないために、お風呂で皮膚をこすりすぎないことも大切です。

  • 8.心血管合併症(CVD)

慢性腎臓病(CKD)という概念が提唱され、特に世に知れ渡るようになったのは、CKDが特に心血管疾患(CVD)と関わりが強いからです。CKD患者さんの死亡原因としてもっとも多いのがこのCVDです。腎機能の低下とともに、CVDの発症率およびCVDによる死亡率が高くなっていくことが知られています。このように腎機能の低下は大きな問題ですが、尿蛋白の存在もCVDに関わる重要な因子として知られています。たとえ同じ腎機能であっても、尿蛋白があるCKD患者さんではCVDによる死亡率が約2倍になることが報告されており、また軽視されがちな微量な蛋白尿の存在であったとしても、死亡やCVDの発症に強く関係することも知られています。これらのことから、CVDの観点からみてもCKDを早期に発見することは重要であり、腎機能だけでなく、尿検査異常にも注意を払うことが必要であると考えられます。

  • 9.骨ミネラル代謝異常

CKD-MBDとは、もともとは透析患者で考案された疾患概念ですが、慢性腎臓病(CKD)の患者さんにも認められ、カルシウムやリン、PTH(副甲状腺ホルモン)などの検査値の異常を示すとともに、骨がもろくなり、血管などの骨以外のところに石灰化をきたすという、3つの特徴的な症状を示すことから名付けられています。これが進行すると骨折や心血管イベントをきたしやすくない、死亡することもあります。たとえば、透析患者さんは心血管イベントを高率に起こしますが、その原因の一つとして血管や心臓の弁が骨のように石灰化し、かたくなることがあげられています。このような異所性石灰化のある患者さんでは、検査値異常や骨がもろくなりやすいことがわかっています。骨の健康にとって不可欠なビタミンDは、腎臓にある尿細管という部位で1α水酸化酵素の働きによって活性化され、活性型ビタミンDと呼ばれるホルモンとなって腸管でカルシウムやリンの吸収を促します。しかし、CKD患者さんや透析患者さんはビタミンDを活性化できなくなり、活性化ビタミンDが低下し、骨折をきたしやすくなります。活性化ビタミンDが低下するため、CKD患者や透析患者では、骨を溶かして血清カルシウム濃度を上げる作用のある副甲状腺ホルモン(PTH)が上昇しますが、PTH値が高いと骨折を起こしやすいこともわかっています。また、CKD-MBDの治療として、リン吸着薬や活性型ビタミンD製剤あるいはカルシミメティックスとよばれるPTHを下げる薬剤が使われます。これらによって検査値異常を改善するのみならず、骨折や心不全をはじめとする心血管イベントを抑制できることがわかっており、最終的には死亡抑制につながると考えられています。