キャリアプラン

山下 倫史 先生-留学体験記

名前 : 山下倫史 Michifumi Yamashita, MD, PhD
留学タイミング:卒後7年後、学位取得後すぐ
留学先(国):Case Western Reserve University, Cleveland, Ohio, USA
研究留学か臨床留学:研究留学と臨床留学
留学中の研究領域・テーマ:糸球体腎炎(特にIgA腎症)の基礎研究

―留学を希望するまで、なぜ留学を望んだか

大学院で基礎研究を少しかじっていたが、もっと本格的に基礎研究、特に糸球体腎炎の研究をやってみたいと思った。新しい世界で何か新しいことに挑戦してみたかった。

―留学先を決定するまで、どうやって決めたのか

その時には、右も左もわからず、ただ医局からの前任者がいる留学先に留学しました。後になって思えば、もっと広く調べて自分が興味を持った研究室にアプライしてもよかったかなと思います。

―留学するまで、何が必要か、何を準備すべきか

基礎研究で留学するのであれば、基礎研究の基本的な手技や知識を習得して、かつ、その中で何か一つ得意なものをもっていると、留学先でも適応しやすいかもしれません。でも一番大切なことは、行った先々で出会ったものをどん欲に学んで自分のものにしていくことではないかと思います。

―留学してから

基礎研究で留学した2年後、業績はほとんどゼロでしたが、なぜだかアメリカでやっていくと覚悟を決めました。それと同時に、クリーブランドクリニックにある腎臓と関係ないinnate immunityの基礎研究のラボに移りました。15人ほどいる大きなラボで、MDは私ひとりでしたが、365日すべて研究に没頭することができ、大切な仲間も多く得ることができました。ボスはインド系アメリカ人で、非常に厳しい人でしたが、いいトレーニングになり、今となってはいい思い出です。それ以降は、結果が出始め業績も少しずつ増えていきました。渡米後6年たった頃、また臨床に戻りたい、でも新しいことにも挑戦したいと思うようになり、腎病理医を目指しました。USMLEにパスした後、病理(ジェネラル)のレジデンシーをCase Western Reserve Universityで行うことになりました。

―留学後のキャリアパス・プラン

3年間の病理レジデンシーを行ったあと、腎病理の専門教育 (Clinical Fellowship)をHarvard Medical Schoolの教育病院であるBrigham and Women's Hospitalで受けることができました。通常、1年間ですが、2年目に欠員が出たこともあり、幸運にも2年間学ぶ機会を得ました。その後は、ジョブアプライをし、複数の施設からジョブオファーをもらいましたが、ロサンゼルスにある一番環境のよいCedars-Sinai Medical Centerで腎病理医かつ研究者としてのスタッフポジションを得ました。Cedars-Sinaiは腎生検が年間4,000件近くある西海岸最大の腎病理施設です。現在は、自分のやりたいことに集中できており、腎生検の組織診断・腎病理の教育をおこないながら、腎疾患の研究を行っています。

―キャリアプランとしての海外留学のメリット

海外留学のメリット・デメリットについて語られることが多いです。でも、メリット・デメリットで海外留学を決めるのではなく、自分がやりたいことがそこにあるのかどうか、もっというなら、あなた自身が留学したいかどうかその熱意が一番大事です。あなたが留学したとして、メリットもデメリットもあなたの周りに無数に存在します。そして、あなた次第で、メリットはデメリットに、デメリットはメリットになりえます。あなたがゴールを目指して挑戦しているかぎり、「失敗」は本当の意味で「失敗」ではなく、「成功へのヒント・学び」になります。

―留学に際して、腎臓領域の医師/腎臓学会会員でよかったこと

腎病理医として、腎臓内科医であったことや腎臓病の基礎研究をやっていることは非常に役にたっています。腎病理はclinical correlationが不可欠で、腎臓内科医であったことは、病理と臨床像をつなげることに非常に役に立っています。そして、腎病理診断は、組織が傷害されたプロセスそのものを診断する領域なので、基礎研究の知識は、疾患・病名という枠組みにとらわれることなく、その本質をみて診断することに非常に役にたっています。

―海外留学を目指す先生方へのメッセージ

究極的にいうと、海外留学に必要なことは、「留学したい」「海外で挑戦してみたい」「新しいことを学んでみたい」というあなたの強い気持ちです。何かに挑戦したいと思うことに早いも遅いもありません。もし、何かを極めたいと思ったら、地球上のどこであってもチャレンジできる時代です。もし、私に直接話を聞いてみたいと思ったら、連絡ください (Michifumi.Yamashita@csmc.edu)。応援しています。